海外でも日本でも通用する自分を作り出す。エストニアでもエンジニアとして活躍できた秘訣とは。

2019.05.30

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島田文平

Profile

早稲田大学で教育政策を専攻。
大学在学中から小学生向けにプログラミングのメンターを務め50人以上の受講生を担当。
大学卒業後、BizReachに入社。RubyやJavaでのシステム開発を担当。
2018年に旅行で行ったエストニアに興味を持ち、帰国後準備期間を経て現地企業に就職。
現在ではNortal社の中で唯一の日本人として活躍している。

2018年、東京のとあるイベントに登壇されていた島田さんの話を聞いてわくわくした。
エストニア自体は「電子政府」というキーワードで知ってはいたが行った人に会ったことは無かった。
筆者にとって、そこに実際に行かれた行動力と経験はとても魅力的に映り、イベント後にコミュニケーションを取らせていただいた。
いつかもっと詳しくお話を聞きたいと思いながら数ヶ月。
Facebookで「エストニアで働いている」と知り、早速インタビューを申し込んだ。

子供の頃から海外は身近なもの。特別なものではなかった

Interviewer海外での就労。しかもエストニアという少しレアとも思える環境ですが、海外や英語などには昔から接点を持っていましたか?

島田さん私の場合は少し特殊だと思うのですが海外での生活はほとんどなく、旅行がメイン。
長くても学生時代に1~2ヶ月短期留学した程度です。
ただ、両親の友人であるアメリカ人や中国人が定期的に遊びに来たりしていて、おじさん・おばさんといった感覚で接していました。
旅行で行くときに彼らの自宅に泊めてもらったりはしました。
なので物心ついたときにはある程度の英語は話せていたと思います。
もちろん文法や細かなことは後から学校の授業で学んでいきましたが。

Interviewerとても羨ましい環境ですね。その流れで海外でも働くイメージが自然とあった。と。

島田さん海外で働くかどうかは別として、海外に行くことや外国の人とコミュニケーションを取ること自体に違和感はなく、そういう意味では「自分もいつか海外にいくんだろうな」とは考えていたと思います。
先ほどお話した両親の友人たちの中には日本のアンティーク家具をアメリカの富裕層向け商品として扱っている人もいたりジャーナリストとして世界を飛び回っている人もいました。
そのジャーナリストの人から「文平。今アフガニスタンにいるんだよ!」と電話が掛かって来たりもしました。
確かに「海外で働くこと」にも抵抗を感じない環境であったことは間違いないと思います。

エンジニアとしての自分の価値を見極める必要があった

Interviewerでは、実際に海外で働くことを決めるのも自然な流れで?

島田さん海外に行く、住むことに関して何も違和感なく過ごしてきた身ではありますが、「じゃいつなのか」ということを具体的に考えることは学生の間にはなくて。
ただ社会人2年目、プライベートで大きな決断をする必要が出てきたタイミングがありました。
結婚を具体的に考え出した時、どうしても「いつか海外に行って働くだろうな」ということも併せて考えないといけない。
どちらも大切なことですが結婚にしても海外での就職にしても、どちらも人、企業といった相手があってのこと。
そう考えると、自分の年齢やエンジニアとしての価値を鑑みてチャンスがあれば動くべきだと思いました。
年齢を重ねれば重ねるほど大きな判断をすることは少なくなってしまいますし。

Interviewerついにそのチャンスが来たイメージですね。

島田さん会社でも評価されることが増え、自分自身でもスキルはもちろん市場価値が上がってきていることを実感し始めていました。
ちょうどその頃、タイミングよく「電子政府」などで話題になっていたエストニアにいく機会があって。
元々はフィンランドに行こうと思っていた時に「エストニアにも行ってみたいな」と色んなところで話していたら知り合い繋がりで紹介してもらうことができて。
GWに行ってみたらとても良い雰囲気で。

Interviewerエストニアと繋がれるとは!実際に行かれてみてどうでしたか。

島田さん企業訪問をしてみたり、現地のコワーキングスペースにも行ってみたりました。
とてもオープンな空気感ですし、そもそも海外から移住している人たちも多い。
エストニア語を話していない人たちも沢山見ましたがみんな楽しそうで。
自分でも大丈夫なんじゃないかな。と思いました。

自分で条件を定めて能動的に動いた

Interviewerついにエストニアへの移住と就職をされる。その決め手は何だったんですか。

島田さん私が「プログラマーが海外で働く」とした時に検討しようと思っていた大きなポイントが3つあります。
1つ目は「気候や食べ物」といった生活環境。例え素敵な場所でもこれらが体質的に合わない場合はかなり難しい。
2つ目は「仕事があるのか・賃金はどうなのか」といった労働環境。これはエンジニアであることを考えると今のご時世、何とでもなるだろうとは思っていました。
また海外で働く際に「給与水準は落とさないようにする」とも決めていましたし。
最後、3つ目「ビザがおりるのか」という点。
これがとても重要なので色々調べては見ました。
例えば私たちの業界ですぐに思いつくのがアメリカ。アメリカでエンジニアをしていく場合、コンピューターサイエンス専攻では無い私には非常にハードルが高い。
オーストラリア、カナダ、ベルリンなどはビザがおりそうですが、全ての場所・国に実際に行って確かめることはできない。

その点でもエストニアは1つ目、3つ目の条件を満たすことができる国であることが実際に行ってみてわかったんです。
つまり、現地で仕事さえ見つければ移住ができる。そこで、現地で職探しをしようと決め、当時勤めていた会社を退職して現地に渡りました。

Interviewerとは言え、仕事は決めずにですよね(笑)どのような求職活動を進められたのですか?

島田さん端的に言うと「機械的に決めた」感じになります。
給与条件だったり仕事条件だったり。
給与は下限イメージを決めていましたし、仕事もJavaのスキルを活かして権限を持って仕事がしたい。
そんなことを考えながらLinkedlnを使って就活を進めました。
こっちの転職活動は日本と違ってエージェントをがっつり使うようなことはありません。
各企業にリクルーターが職業として存在していて、その人たちが色々と積極的に動いています。
本当に市場価値が高い人材にはその人たちから直接声掛けがあったりするんです。
逆にいうとリクルーターにダイレクトに連絡することで、自分を売り込むこともできる。
私の場合はそちらの方法を取りました。

Interviewer自分から動かれた成果ですね!今の会社や会社でのお仕事はご自身の希望に添うものでしたか?

島田さんはい。第一希望に挙げていた企業に入ることができました。
今の会社では唯一の日本人として働いていますが、仕事内容も待遇も想像していた以上に恵まれた環境にいると思います。
希望通りエンジニアとしてJavaのスキルが活かせるプロジェクトに参画できていますし。
今は漸く仕事にも慣れてきた感じではありますが「日本に帰りたい」とか思うこともないですね。
そんなことを考えている余裕がないというのもあるかもしれませんが(笑)

海外でも日本でも大切なことは同じ。相手をリスペクトすること

Interviewer少し慣れてきたとのことですが、実際に海外で働いてみて感じたことなどあります?

島田さん英語力がかなり伸びたと実感しています。これは面接の効果だと思います。何を伝えるか何を聞かれたか、どうすれば理解してもらいやすいかなどかなり真剣に取り組みました。
またやはり海外で生活するという経験自体が自分自身に自信が持てるようになる大きな要素だとも思います。

仕事に関してですが、やはり海外はレイオフされやすいこともあるので、最初のうちは土日も働いて
自分の仕事の質を上げることを意識しました。
その点は精神的にキツかった部分ではありますが、今はそういうことも減らしていっている状況です。
もちろん様子をみながら。
この前も同僚とご飯を食べている時に「入社当時は土日も働いてたよ」と話したところ「そんなことしてたの?」「そんなことする人いるんだ?」といった感じになったのでこのあたりは考え方の違いなんだろうと思います(笑)

日本人は多少条件が悪くても、体調が悪くてもある程度我慢して働くことが多いと思うんですが、
海外だとそうではない人が多く割り切りがはっきりしていると思います。
家族や友人、趣味や余暇も大切で仕事が全てじゃない。
もちろん仕事に関して無責任という訳ではなく、デキる人は割り切りながらも結果を残します。

あと私自身が気に掛けたこととしては能動的に動くことはもちろんですが、何に対しても敬意を払う、丁寧に対応するということです。
自分の国ではない場所、しかも色々な国の人がいる環境で、私自身文化や風習がわかっていないまま生活し始めました。
やはりどのような環境でも自分の立ち位置をしっかり自覚し、相手をリスペクトすることは重要だと思っています。

専門的な例えになりますが、プルリクを送る時も細かめのコメントも添える。
新しい仕様や変更点などはwikiにしっかりと書く。
これをやる人、やらない人ではマネージャーの管理労力も変わってきます。
結果それが自分の評価にも繋がってきますよね。
もちろんこれらの大切なことは日本で仕事する中でも変わらない本質的な事だとも思います。

Interviewer確かに働き方や考え方は大きく違う部分がありますよね。島田さんとしては今後はどのように進んでいかれるお考えですか。

島田さん日本にいた時以上に技術力を伸ばせる環境だと思っているので仕事でもしっかりとアプトプットし続けて、自分自身の市場価値も上げていきたいと考えています。
もし数年後に日本に戻る判断をしたとしても、今よりもさらに自分の希望に添った仕事につけるようにしていくことが可能だと思いますし。

ナレッジシェア&メッセージ

Interviewerありがとうございました!やはり海外との接点が増えるとスキルはもちろん視野も広くなっていきますよね。
今も「これから海外に行きたい」と思っている方々が沢山いらっしゃると思いますが何かアドバイスなどいただけますか。

島田さんみなさん色々な思いがあると思うので参考程度にはなるのですが、「海外に出る」ということ自体、時間やお金など多くのコストが掛かります。
ただ、それを想像したり調べたりしたうえで「そのリスクを取ってでも行きたい」という覚悟があるならまずは一歩出てみるのもいいんじゃないかと思います。

仕事に関しても日本よりも市場はオープンですし年齢に関係なくチャレンジできる土壌があります。
私たちが思っているよりも世の中はオープンで、受け入れてくれる場所はある。
そんなに仰々しく考えなくてもよいのではないかなと思います。

Editor’s note

編集後記

今回島田さんには時差のある中お時間いただいたのですが、貴重な日中の時間、とても丁寧にお話いただきました。
お話にもありましたが、島田さんの考え方や行動をリアルに体感させていただきながら
普段から「自分自身の価値を海外で通用するレベルに持って行く」努力の大切さも感じたインタビュー。
特別なことをするのではなく、日々の小さな所作。ここからでも変わっていくチャンスはあるのだと思います。
エストニアで活躍する日本人。それだけでも色々いいこと、辛いことがあるはず。
ただ、そんな中でも自分のポジションをしっかり見極めて、更なるレベルアップを進める島田さんの1年後がとても楽しみに思います。

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