大好きなサッカーで越えて来た言葉の壁。 偶然行ったベトナムにあった自分のやりたかったこと。

2019.06.11

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池山諒太

Profile

小中高通してサッカー漬けの毎日。
人に教えることが好きだったこともあり大学入学からはコーチも経験。
大学卒業後 教育関係の代理店に入社しながら土日もコーチを続ける。

とあるきっかけで「やりたいことをやろう」と思い立ちベトナムに移り現在ではベトナムでは数少ない「スポーツで収益を上げる企業」として着実に実績を積み重ねている。
Advance Football Club

私が属するIT業界でも重要なビジネスの場となっているベトナム。
友人からそのベトナムで「サッカースクールを開いている日本人がいる」と聞き色々と調べてみるも、日本人が起業することはもちろん、組織を運営していくことの難しさを教えてくれる記事が多く驚いた。
その中で順調に事業を拡大している池山さんにホーチミンにてリアルなお話を聞く。

旅人に憧れサッカーボールと上海に

Interviewer実際にサッカースクールの授業を見せていただきありがとうございます。生徒さんがとても楽しそうでした。
池山さんご自身は子供の頃から海外やスポーツが身近な環境でいらっしゃったんですか?

池山さんスポーツ、特にサッカーは大好きでした。実際に小中高とサッカー部。毎日夜遅くまで練習していました。ただ海外に興味を持ったのは大学生になってから。
まさに当時日本を代表するプレイヤーだった中田英寿選手が引退し「旅人」となって世界を巡ると決めたのをリアルタイムで見ていて頃でした。
憧れもありましたし僕もサッカーボールを持って海外に。

Interviewerいきなりですね(笑)実際にはどちらに行かれたのですか?

池山さん大学の友達の友達が上海に留学していたのですが、その人が日本に一時帰国した時に紹介してもらって。
その時に「海外はいいよ」「色んな国の友達が増えるよ」と聞いていたので、改めて連絡を取り「じゃサッカーボールを持ってほんとに行くね。」となりました。

Interviewer実際に行ってみてどうでしたか?

池山さんとても刺激的な経験をした1週間でした。
言葉はわからなかったんですが、その友達が通っている大学に潜り込んでサッカーしている人たちを見つけると身振り手振りで仲間にいれてもらったり。もちろん全く知らない人たちです(笑)
上海だけでなく、そのあとベトナムにも行きましたし海外に対する印象はとても良いものでした。

Interviewer「ベトナム」というキーワードが出てきましたが何か運命的なものを感じられた?

池山さんきっかけはそうでもなくて(笑)「直行便がある」「予算に収まる」などのキーワードで絞ったり。テレビの「ベトナム特集」を見た3日後にホーチミンに来ていました。
ここでもベトナム語はわからないので、また知らない人たちのグループに自分から入っていってサッカーをして過ごした4日間でした。
とは言え、この経験が今に繋がっていることは間違いありません。

やりたいことにチャレンジした方がよいと思った

Interviewerやはりサッカーがお好きなんですね。

池山さんはい。サッカーはもちろん、人に教えることにも興味があって。大学時代からコーチを始めました。新卒で就いた仕事も教育関係の代理店。全国展開している会社で同期も仲が良く、営業担当として充実した4年間を過ごしました。
もちろん社会人になっても土日はコーチをしていましたね。
ただちょうどこの頃、中学時代のサッカーのコーチ、高校時代の恩師が体調を崩された話などを聞き、人生観が変わってきたタイミングでもありました。
「やりたいことをした方がよい」と思い立ち、すぐにJICAを受けました。ケニアの孤児院でサッカーを教えるプログラムに参加したかったんです。残念ながら当時アルジェリアの事件などもあって実際にケニアに行くことはできなかったのですが、その時に友人から「ベトナムでサッカーコーチを探している人がいるよ」と聞き。
ベトナムには行った経験もありましたし、そのかたと日本で会いすぐにベトナム行きを決めました。
日系のサッカースクールで場所はここホーチミンでした。

Interviewer動きが速い(笑)

池山さんただ実際に来てみると色々と困ったことが起こりました。まずは会社ではなかった。これはベトナムの国では大きな問題で就労ビザがでない。違法である観光ビザで対応するしかないんですがそもそも臨時対応でしかない。
そうこうしているうちにお給料も遅延したり代表とも連絡がつかなくなったり。
そんな状況が2年程続き、ベトナムで日本人に騙されたような結果になってしまいました。笑

Interviewerそれでも続けられたんですよね。

池山さん不思議と後悔などは全くなくて。スクールに通ってくれる子供たちもいますし、その子たちにしっかりと教えてあげたいという私自身の気持ちを優先しました。
親御さんたちもかなりサポートしてくださり、とてもありがたかったです。
仕事はもちろん人生の大先輩でもある方々から真剣に御叱りいただいたり、アドバイスいただいたり。
実際、色々とキツイこともありましたが、このような状況もあり、キリのいいタイミングで改めて自分でスクールを立ち上げることにしました。

ベトナム人になることを意識する

Interviewer結構ハードなお話ですが、ご家族にはどうご説明を。

池山さん「聞いてた話と違う」となってきた時は、さすがに親には言えずにいました。
現地採用で働くならまだしも、起業するわけですから、たくさんの心配をしますよね。だから、起業する相談は絶対にできないと思って、事後報告です。「実は起業した」って。
今までの経緯はもちろん、先の事もしっかりと話すことにしました。
やはり母親は超心配していましたが、父親は自身も起業経験があったので「頑張ってみろ」と背中を押してくれて。
妻に関しては、現地採用で違う会社で働いていましたが、私の状況を全て知ってくれていますし、「失敗したらさっさと帰ろう」って理解してくれてサポートしてくれました。
とてもありがたい存在です。

Interviewer奥さまの支えはありがたいですね。しかも現地採用でお仕事まで。

池山さんそうなんです。妻は代理店時代の同期。英語が話せるので、たまに通訳などもやったりしています。
私自身はベトナムに来てからオンライン英会話などで英語を勉強し始めたんですけど(笑)
もちろんベトナム語も勉強したのですが確実に英語の方がコミュニケーションしやすいことに気付いて、ベトナム語に関しては日常会話ができる程度で特別な勉強はやめました。

Interviewerコミュニケーション、言葉や文化などやはり重要ですよね。

池山さん海外で長く生活していくにあたって大切にしていることは「その国やその国の人」をリスペクトするということです。
言葉はもちろんですが、働き方や時間の使い方を知り、私自身が外国人であることを理解する必要があります。
例えば「約束の時間」や「納期」ってあってないようなものだったり、お昼寝文化に関してもそう。
日本だとなかなか納得できないことも多いです。
他にも「国際レディース&ベトナムレディースデイ」などの大切な日や「ボーナス以外の特別な給与が必要」など日本では馴染みのない習慣もあります。
だけど、こっちではそれが普通なのであれば受け入れていく必要がありますよね。
もちろん一方的なものではなく、相手にも私を理解してもらうよう努力もします。
腹が立ったり納得できないことに対しては、自分の意見を強く伝えることもありますが、しっかりと節度は守ってお互いに落としどころを見つけるような感じです。

また文化というところでいくと、ベトナム人になることを意識してはいます。
もちろん現実的には無理なのですが、こちらではとても食文化や儀式!?などがある訳です。
例えば、北部のハノイでは犬を食べたり、こちらでは羊の血を飲んだり。
沢山お酒を飲むこともそう。おめでたい時のおもてなしだったり彼らにとってはとても大切なもので、私に対する敬意として薦めてくださることもある。
その時に「いやそれは、、、」というのは失礼ですよね。
相手の気持ちやその場の雰囲気をしっかり理解して自分も溶け込むようにしています。
いい意味で「ノリ」はとても大切だと思いますね。

ベトナム人のスタッフへのケアも大切です。
こちらでのビジネスはベトナム人ありきであることは間違いないありません。
日本出張の時は彼女らに「日本のお土産のリクエスト」を聞いて応えるようにもしています。

子供たちの安全、親御さんの安心をキープしていく

Interviewer現地に馴染むことの大切さ、それに対する努力。実際に海外に来ないと体感できない部分ですね。

池山さんそうなんです。このような経験や考え方の変化も「海外に来て良かった」と思うことの一つです。
あとやはり日本にいた時よりも、圧倒的に沢山の方たちにお会いさせてもらえています。
みなさん立場も様々ではありますが日本では簡単にお会いできない方々ですが、この国だから&この立場だからこそお会いできる。
私自身としては、同世代とは少し違った密度で人生を過ごせていると思っています。 また「沢山の人とお会いできる」という部分にもリンクしますが、ベトナムに限らず海外ではよく「駐在員と現地採用の方々の考え方の違い」がネタになることもありますよね。
ただ、現地採用も経験した私はあまり気になりません。
海外で仕事をしていたら、そんなに人のあれやこれを考えることもなくて。どんな立場でも頑張ってたら、認めてくれる人はいるよ。それ自体に良いも悪いも実際は無いですし。

Interviewer色々とご経験される中で、ベトナムでの起業に関してはどのように考えられていますか。

池山さんスポーツに限らず、サービス・教育関係は起業に関しては凄いハードルが高いですが、とても大きなチャンスがある場所だと思っています。ただ、ベトナムではスポーツは、イコール娯楽ですから、ビジネスにしている企業が少ないっていう意味でも、ちゃんと正規にスポーツの会社を設立できてよかったなと思っています。
法人を設立する際に役所から「スポーツってどうやって仕事にするの。どうやってお金稼ぐの」と聞かれて。きっと教育やスポーツスクールが事業になるという発想がまだあまりないんです。
お国柄もありますが、これから作っていける市場だということも感じました。
もちろんいい事ばかりではなく、辛いことや悩むこともあります。
単純なところだと簡単に日本に帰れない。両親や友人に会えない(笑)
便利なコンビニ。綺麗なトイレ。安くて美味しい牛丼。日本はやっぱり魅力的ですし。
だけどそれは「ベトナムから撤退したい」という意味ではなく、今は「たまに数日帰れたら嬉しいな」という感じす。

事業に関してはやはり「安全」に対するクオリティをどう担保していくか。
スクールでの怪我や病気に関してです。
医療レベルの問題もありますが、そもそも異国の地でお子さんを預かっているわけですから安全にサッカーをして、安全にお家に送ることが最低限のミッションになります。 その安心、安全のキープが実はとても難しい。
スポーツなのでアクシデントはつきものですし、親御さんたちも理解してくださってはいますがいかにそうならないようにしていくかが海外ではより重要になると思っています。
幸い今まで大きなトラブルもなく進んでいますが、これを続けていくことが最大のテーマです。

Interviewer今後はどのような展開をお考えですか?

池山さん事業展開する国自体は広げるつもりはなく、ベトナムで広げていければと思っています。
現在もホーチミンやハノイなど展開していますが、他の街にもチャンスはあります。
またサッカーだけに限っている訳でもなく、色んなスポーツを誘致したい。
チアダンススクールは開校できました。これからスイミングスクールの開校準備しています。
やはり「ベトナムで日本人の先生達が日本人の子供たちを教える」ことに価値があると思っているので色んなスポーツが発展して行けば嬉しいです。
日本、ベトナムをスクール事業はもちろん、他でもどう繋げていくかを今後5年かけて作っていくことが目標です。

個人的には昔からの夢、孤児院でのサッカースクールをやっていく準備も進めていきたいです。
ベトナムへの還元という意味も込めて。

ナレッジシェア&メッセージ

Interviewerベトナムで酸いも甘いもご経験されたからこそのお話、ありがとうございます!
今後、海外に出ようとしているみなさんに何かアドバイスなどいただけますか。

池山さん日本にいると「転職」や「失敗」に対してネガティブなイメージがまだ大きいですよね。もちろん「転職や失敗が良い」ということでもないのですが、ベトナムなど海外では、日本では就職が難しい大手へ転職ができることもあります。
またベトナムは面白い考え方で、「転職する」ということは「向上心が高い」とみなされますし、実際に転職できた場合は「評価されている」という見方に繋がる。
ベトナムでは日本人採用がまだたくさんあるので、1回失敗してもやりなおすチャンスはあるし思っている以上に仕事はある。

もちろん「海外に出る」ということ自体、時間やお金などコストが掛かります。
それを想像したり調べたりしたうえで「それでも行きたい」という思いがあったり、難しく考えずにまずは一歩出てみるのもいいんじゃないかと思います。

失敗したら失敗したらでいいし、例えばベトナムが合わなくても他の国があうかもしれない。
「やっぱり海外あわないな」という結果になっても、それ自体が経験になります。
働き方も変わってきているので「自分がやりたいことがあるならやっちゃう・行ってみたいのであれば行っちゃう」こと自体が昔よりも勇気のいることではなくなってきている。

私自身も2年間、かなり辛い時期がありましたが、ちゃんとやっていれば助けてくれる人はいるし開ける未来があると思っています。
私たちが思っているよりも世界はオープンで、受け入れてくれる場所はある。
そんなに仰々しく考えなくてもよいのではないかなと思います。

Editor’s note

編集後記

弊社も開発拠点を設けるベトナム。行くたびにその活気に驚かされます。
驚異的なスピードで成長を続けるベトナムの中で、新たな市場を開拓し実績を出していらっしゃる池山さんのお話はとても興味深いものでした。
なかなか文章にし辛い内容もありましたが、そのような経験も含め経営者と事業は強くなっていくんだろうと思います。
また「子供たちの安全」に関するお話をされる時に、池山さんのギアが何段階か上がる。
この熱量も親御さんたちから支持される大きな理由の一つだろうと理解しました。
今後、私自身も定期的にベトナムを見ていくことになるので、ウォッチしていきたいと思います。

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